本文へ移動

ブログ

ブログ

No.94 経費を予算化するうえで大事なこと

2023-05-18
こんにちは、アオイパートナーズの齋藤です。
先日、ある社長と話をしていて、経費の予算化についての相談を受けました。
「広告費や交際費や商品開発費など、事業拡大に必要な経費を予算化した方がいいと思うのですが、どうでしょうか?」という内容です。
今日のブログでは、これについての私見を書いてみたいと思います。

そもそも「予算」とは「予め計算された数字」であり、企業においては売上予算、原価予算、経費予算、利益予算が一般的です。
「予算」というと支出の上限のようなイメージがありますが、
売上や利益も予算化して実績を管理し差異分析をする「予実管理」は、企業の経営管理手法の一つになっています。

売上予算は、市場や顧客、競合他社などの外部環境によって変動するものですから、
明確な根拠を持って年間の売上予算を立てられる会社は少ないでしょう。
したがって、月次予算を立てても毎月達成し続けることは簡単ではありませんね。

原価予算は、販売業では商品仕入、製造業では材料費や外注費などの見積りであり、
売上増減に伴って変動するもの(いわゆる変動費)がほとんどですから、
売上予算に想定原価率をかけて予算化することになります。

経費予算(販管費予算)は、企業が継続的に事業活動を行うのに必要な費用の見積りであり、
一般的に固定費と呼ばれるように、売上や原価に比べて変動する要素が少ないものです。
したがって、過去の実績をベースに予算化しても大きく外すことはまずありません。
そして、売上・原価・経費の予算が決まれば、自動的に営業利益予算が確定します。

さて、冒頭の社長は「事業拡大のために必要な経費を予算化したい」ということでした。
確かに、広告費・交際費・商品開発費などは、積極的な事業拡大を図るうえで必要な経費であり、
先行投資的な意味合いが強いものでしょう。
これらの経費について、前年実績以上のお金をうまく使って売上拡大を図りたい、
という社長の考えは理解できます。
問題は、予算金額をいくらに設定するかです。

経費を予算化すれば、当然ながら使います。
支出が先で、収益は後から生まれるもの。
特に、広告費・交際費・商品開発費などは、費用対効果を想定しにくいものです。
そのマネタイズがいつ、いくらになるかは、なかなか予測できるものではありません。

積極的に事業拡大しようとして、経費予算を前年実績以上に増額して勝負できるのは、
利益剰余金の蓄積があり、資金に余裕がある会社です。
あまり余裕のない会社がこれをすると、当面の赤字が増え、資金が不足し、借入金に頼らざるを得なくなります。
ですから、自社の財務体力で吸収できる範囲内での予算設定が望ましい。
つまり、その支出が短期的に売上・粗利につながらなくても、
損益と資金に大きく影響しない程度の予算額ということになります。

もう一つ大事なことは、逆説的ですが、しっかりとリターンを狙って売上予算に反映させること。
広告費・交際費・商品開発費など、費用対効果が予測しにくいということを理由(言い訳)にして、
狙うリターンを算定していない会社もよく見受けられます。
売上予算に反映させることは、このような成果を出すという意思の表れ。
売上予測ではなく売上予算ですから、そこに意思がなければ成果を出せるはずはありません。
会社のお金を使うからには、意思を持ってしっかりとリターンを予算化するのは当然です。

事業拡大・売上拡大も大事ですが、私は、会社にとって最も大事なことは持続的利益をあげることだと思っています。
売上予算が達成しなくても、原価と経費が大幅に削減できていれば、利益予算を達成することは可能です。
「入るを量りて出ずるを制す」は、財政再建や経営再建の際によく引用される言葉。
収入の額を計算して、それに応じて支出の計画を立てること。
この考え方を原理原則として、あとは自社の財務体力に応じて経費の予算化を検討してほしいものです。