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No.100 適正な採算管理はできていますか?

2023-08-01
こんにちは、アオイパートナーズの齋藤です。
このブログは2021年7月1日にスタートし、今回で100回を迎えました。
中小企業の経営者の方々や、組織マネジメントを担う皆さんを意識して、経営財務や組織運営、業務改善などに関するテーマを取り上げ、弊社の考え方を書き綴ってまいりました。
賛否両論いろいろあろうかと思いますが、読者の皆様の何かしらのきっかけとなる部分があれば、これからも当サイトをお気にかけて頂ければありがたく存じます。
引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、私が気になる最近のニュースといえば、日銀が長短金利操作(YCC)の修正に踏み切ったことです。
日銀は長期金利の上限を2022年12月に0.25%から0.50%に引き上げ、
さらに先週7月28日に1.00%に引き上げました。
金融緩和の姿勢を維持しつつも、円安と物価高への懸念から、
長期金利を強引に抑え込まず緩やかな上昇を容認するということです(日経新聞より)。
わかりにくい方針ですね。

中小企業への短期的な影響は大きくないかもしれませんが、
今後の流れとすれば金融機関融資の利上げが想定されます。
多くの企業では、短期資金の借入があり、1年ごとに同額折返しの需要が発生します。
また、コロナ関連融資で借入過多になっている中小企業は、キャッシュフローだけでは返済を賄いきれず、
経営を維持するための追加資金が必要です。
これからは、短期資金の折返しや長期運転資金の依頼をした時に、
従来通りの金利水準で希望金額の融資が受けられるかどうか、微妙なところです。

現に、コロナ禍で連続赤字が続いている企業に対して、短期資金の折り返しや長期運転資金の融資について、
金額や金利の審査がシビアなっている金融機関も多く見受けられます。
金融機関も営利企業ですから、回収リスクに応じて融資条件を厳しくするのは当然のこと。
「企業が厳しいときに支援するのが金融機関ではないか」と平然と文句を言う経営者もたまにいますが、
本末転倒もいいところです。
結局は、いい条件で融資を受けられるように、きっちり利益を出せる体質を一刻も早く作り上げるしかないのです。

弊社のクライアントでも、業績回復を実現している企業は、仕入先の見直し、販売単価アップの交渉、
新たな販路開拓、業務効率化の推進、固定費の削減、新たな商品サービスの開発、ビジネスモデル自体の変革など、
経営層が一丸となって組織を動かしています。
その中でも共通して言えることは、採算管理を強化していることです。

一般的に、営業や製造などの直接部門と比べ、経理や総務などの間接部門は利益を生まない部門とされ、
最低限の人数で効率的に仕事をこなすことを求められがちです。
それゆえ、多くの中小企業の経理部門の役割は、請求書発行、入金支払管理、
会計データ入力などの事務作業になっています。
経理には、会社の業績管理や採算管理の元になるデータが集中するわけですから、
本来はこれらの情報を管理者がタイムリーに収集し分析しなければならない。
そのために、管理者は経理・総務部門に
「何のために、どのデータを、どのようなフォーマットでアウトプットしてほしいのか」
を明確に伝えなければなりません。

このようなことを行う管理者は誰なのか?
時には社長、時には他の役員、時には部長課長から、
「あの資料出して、この資料まとめて」と頼まれるケースがあると、経理・総務部門の担当者からよく聞きます。
複数の管理者から思い付きのように指示される間接部門の担当者は、目的も理由もわからず、
不満を持ちながらもできるだけ効率的に作業することになります。
そうすると、業績改善や業務改革の対策を考えるには不十分な情報にとどまってしまい、結局活用されない。
こんな無駄なことが多くの会社で日常的に起きています。

弊社のクライアントで業績回復を実現している企業は、会社として
「何のために、どのデータを、どのようなフォーマットでアウトプットしてほしいのか」を明確にして間接部門に伝え、
間接部門はそれを定例業務に組み込んでいます。
それにより、管理者が現状の問題点と課題を明らかにして、適正利益を確保するための適切な施策を決めて、
速やかに組織全体に働きかけています。

わかりやすい売上ばかり追いかけて、手間暇がかかる個社別採算管理・商品サービス別採算管理を
ないがしろにすれば、利益など出ようはずがありません。
現状を正しく認識できなければ、様々なコストアップを吸収できる粗利を確保することはできません。
円安の常態化に伴う原材料価格上昇、賃金上昇、金利上昇など、企業にとってのコストアップは今後も必然です。
管理機能が弱いと思われる会社は、その重要性を再認識したうえで、
適正な採算管理ができるような社内の仕組みを早急に整えるべきではないでしょうか。