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No.105 「パーパス経営」から考える

2023-10-16
こんにちは、アオイパートナーズの久保田です。

最近、複数の弊社のクライアント企業の経営者から、「パーパスを決めたほうがよいでしょうか?」という質問をお受けしています。
インターネット、書籍、雑誌でも「パーパス経営」という言葉を目にする機会が増え、関心の高まりを感じます。

「パーパス」とは英語で、「目的、意図、意義」などを意味します。
「パーパス経営」とは、企業の考え方の中の一つである「パーパス」を明確にして行う経営ということで、
2010年ごろから提唱されているとか、2018年にアメリカの経営者が使ったとか、言われているようです。

企業の考え方を示すものとしては、パーパスという言葉が注目される前から、
企業理念・経営理念・ミッション(使命)・ビジョン(未来像)・バリュー(価値観)・クレド(信条)など、
様々な言葉が使われてきました。
これらの言葉により、自社が「どんな会社なのか」を明確にしようとしてきたということです。

例えば、弊社でも「企業理念」策定の支援を以前から行ってきました。
「自社の企業活動を通してどのような価値を提供していくのか、自社はどのように企業活動を行うのか、
自社の企業活動を通して関わる人々(顧客や従業員や取引業者、その他)や世の中がどうなることを目指すのか
」といったことなどを企業理念として言語化することを支援してきました。
「パーパス」という言葉は使っていませんでしたが、
「パーパス」として示されるようになってきている概念も企業理念に盛り込んでいたと言えるでしょう。

「どんな会社なのか」を明確にすることは、企業にとってとても重要なことです。
それを明確にすることなく、企業の長期的な成功はありえません
企業の長期的な成功を可能にするには、従業員が共通の目的目標の達成を目指して行動していく必要があります。
そのためには、従業員が会社の目的目標や「どう行動すべきか」、
つまり自社が「どんな会社なのか」を共有できていなければなりません。
また、自らの意思で自社に所属しているという認識のもと、行動してもらわなければなりません。
さらに、従業員だけでなく、顧客から支持を得て自社の商品・サービスを「買ってもらう」ためにも、
取引業者と良い関係性を持っていくためにも、
自社が「どんな会社なのか」を知ってもらうことは、企業の成功のためには大切なことです
(そもそも、企業に固有の「成功」が定義されなければ、
企業が成功したのかどうか評価することもできないわけですが)。

ということで、自社が「どんな会社なのか」を明確にすることは、これまでもこれからも不可欠です。
では、近年、とりわけ「パーパス」という言葉が注目されるようになっているのはなぜなのか。
私が経営支援を通して、より感じるようになっているのは、
「会社に入っても、会社の業績のために働かなければならないと必ずしも思わなくていい、
と口にする人が増えている」ということです。

以前も、会社の業績のために働くことについての疑問を聞くことがありました。
例えば、高度経済成長期を経験してきた団塊の世代と呼ばれる1950年くらいに生まれた人は
「会社のためにと思って働いてきたがなんだったのか。
働いていた当時は疑問を持っていなかったが。まあ稼がせてもらったとは思うかな」
と退職して間もなくに言っていました(あくまでも一例です)。
また、1965年くらいに生まれた人からは「仕事はそこそこにやればいい」と
1990年生まれくらいの自分の子供に話していました(もちろん、これも一例です)。
いずれも、2005年くらいにプライベートの場で聞いた言葉です。
とはいえ、職場においては、指示された仕事については遂行するのが大方のことだったように思います。

一方、今、2023年現在。
仕事の指示をする時には、目的や根拠をきちんと伝えないとやる気を出してもらえない。
「いいからやれ」なんて通用するわけはなく即パワハラ認定される。
というような話をクライアント企業から聞くことが本当に多いです
(ちなみに、個人的には「目的や根拠」を明確にしたい方なので、よい傾向だと思っています)。
このような状況から、「この会社で働くことが、どう良いのか?自分の目的とどうつながるのか?」
ということをより分かりやすく示すために
「パーパス」を区分して明示することが求められるようになっているのかと感じています。

情報は受け手に伝わることが最も大切なこと。
そのためには、受け手に伝わる言葉を使うことが重要です。
ですから、今、より伝わりやすい「パーパス」という言葉を使うのは、意味があることなのかもしれません。
とはいえ、「パーパス」という言葉でも不十分な時代になるかもしれません。
「パーパス」という言葉が時代に合わなくなるかもしれません。
そうしたら、また変えていくことになるかもしれません。

この点について気になるのが、ビジネス用語には商機を見出されることも少なくないということです
(私が言うのもなんですが…)。
状況が停滞したり悪化したりしているとき、思うように成果が上がらないときは特に、
新しい言葉や新しいものは新鮮で、現状打破をもたらしてくれるように感じるものです。
とはいえ、必ずしも古くなっているからうまくいかなくなっているとは限りません。
十分に使っていない、正しく使えていない可能性も少なくないと感じます。
もちろん新しい言葉や新しいものが必要であれば変えたほうがよいのは言うまでもありません。
不易流行、変わらないものと変わるものがあるということです。 

いずれにしても、「どんな会社なのか」を明確にし、共有できているかが重要です。
そして、より重要なことは、「どんな会社なのか」を表現した言葉が実体と合っているか、
実際の行動となっているかです。
実際の行動となっていない限り、作った言葉は空疎であり、むしろ言行不一致により信頼感が低下しかねません。
最後に、最も大切だと感じていることを付け加えて、今回の記事をおしまいにしたいと思います。