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No.107 「スピード感を持って」について

2023-11-15
こんにちは、アオイパートナーズの久保田です。

経営において、「スピード」はとても大切ですね。
お会いする経営者からも「スピード感」という言葉をよく耳にします。
特に、従業員さんに向けて「スピード感を持って行動してほしい」とお話しされることが多いです。
スピーディーな経営やスピーディーな対応を行うことは、顧客により早く価値を提供することです。
また、環境変化の速度が増している現在においては、企業もスピーディーに変化していかないと価値を提供していけない不要な存在になってしまいかねません。

古代ギリシアからのことわざに
「チャンスの神様は前髪しかない」というものがあります。
女神だとか、「幸運の神」だとか、言い回しはいろいろあるようですが、
いずれにしても、「チャンスは訪れたそのときに掴まなければならない、後からは掴めない」という意味で、
タイミングが大事ということですね。
タイミングも、顧客にスピーディーに対応したり、企業がスピーディーに変化したりする上で、本当に大事です。

とはいえ…、「スピード感を持って」という経営者に対して
「なんだかなあ…」と思うことも、実のところ少なくありません。
それはどんな時か。

まずは、何かを始める時です。
「友人の経営者から良いと聞いたので、まずは始めるように社員に指示したんですよ、スピードが大切ですから!」
と、ある経営者が、必要な準備を十分に行わせることなく、従業員に新たな取り組みを
始めさせたということがありました。
そのケースでは、自社に合った適切なやり方でやろうとしていなかったためにうまくいかず、
やり直しが必要になり、二度手間、三度手間が生じてしまいました。
また、準備をきちんと行っていれば予防できたであろう問題にも対応しなければならないため、
余計な手間も増えました。
想定しえたであろう問題に備えた対策も講じておかなかったため、その対応にも時間がかかります。
そもそも費用対効果の見積もりが甘かったために、方向性の修正が必要となり、
結果的には取り止めることになってしまいました。
要は拙速だったということです。

次に、始めてから。
経営者に「あれはどうなった?進んでないの!?早くやって!どんどんやって!とにかくやって!」
と一気に進めるよう指示された担当者から相談を受けた(愚痴を聴いた?)こともあります。
担当者は「今それをやってもうまくいかない、物事には順番がある、進めるうえで気になることもある」
と言っていました
(とはいえ、担当者は及び腰になりがちなものですが…)。

さらに、始める時にも、始めてからにも見受けられることとして「複数のことに力を入れさせる」
ということもあります。
新たな取り組みを始めて進めているところに、さらに別の取り組みを始めたいというようなことです。
複数の取り組みに力をいれようとすると、投入した力が分散してしまい、
労力をかけているのに遅々として何も進まない…といったことになりかねません。

以上のようなことから、なかなか取り組みが形にならない、成果が上がらないという状態が続いていきます。
しだいに、担当している従業員の負担感が大きくなっていき、やる気は削がれてきます。
いつしか、始めたことが続かず、やらなくなります。
続いていたとしても、ただやっているだけになります。
続けていないのに続けているふり、やっているふりをするようになることもあります。
このような姿勢は新しく始めた取り組みにとどまらず、以前から行ってきたことも含め、
業務全体に波及していきます。
こんな様子を目にして、「もったいないなあ」と感じることが少なくありません。

では、取り組みの成果を上げていくためには、どうしたらよいか。
始める時のポイントとしては、
・進め方の仮説や適度な計画を立てる
・想定される課題とリスクを洗い出し対策を講じる 
・優先順位をつける 
・責任者を決める
・関係者と合意しておく
・計画に進捗確認を組み込む
・期日を明確にする
といったものが挙げられます。

始めてからのポイントとしては
・進捗確認を行う
・進め方や優先順位の見直しを行う
というようなものがあるでしょう。

もっとも、スピード感を持たなくていいわけではありません。
スピード感と着実さのバランスが大切、ということですね。

そして、そもそも、「スピード感を持って」と指示する割には、
指示する側がスピーディーに動いていないこともよくあることなんですよね…。
そこは従業員も感じ取っていて、
「上もスピーディーじゃないし、そこそこやるのでいいか」と思っているのが見て取れます。
指示する側の率先垂範の姿勢が重要だと、切に感じます。

なんにせよ、スピーディーに着実に顧客に価値を提供し、スピーディーに着実に変革を進め、
成果を上げていきたいものです!