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No.116 適切に、決めていますか?

2024-04-15
こんにちは、アオイパートナーズの久保田です。
今年は桜を長く楽しめました。
おかげで、例年よりも、桜を愛でる機会を設けやすかったですね。
私も、毎週、どこかしらを歩きに出かけました。

そのうちの一回は、異業種の知人たちと出かけました。
その時に「職場あるある」で盛り上がりました。
盛り上がった話題の一つが「上が決めてくれなくて、ホントに困る」というもの。
例えば、同行した方の一人は、ある大企業で事業部の次長に就いていて、上司である部長に、
決裁を受けるべく起案書を提出していたけれど、なかなか回答がこないとのこと。
私が「難しい案件なんですか?」と聞いたところ、
「いや、そんなことないですよ。
参考になる前例もある案件だし。
決められるように、資料も付けてるし、ポイントもまとめてるし。
性格なんですかねえ?
しょうがないから、決裁待ちボックスで、毎朝その書類を一番上に置き換えてます!
それでもダメなんですよね。
攻防しあってます!」
と、その次長は苦笑いしていました。
聞いていた他のメンバーも
「ホント困るよねー」
「決定が遅くなって対応に苦労するのはこっちだからねー」
と口々にいいあっていました。

私も、関わる中小企業で、決められない決定権者に困惑することが少なくありません。
ですので、大いに共感を覚えるとともに、「決められない決定権者」問題は、企業の規模によらず、
大企業でもそうなんだなあーと感じ入りました。

私が決められない決定権者に直面するのは、例えば、部長と何人かの課長で、
部内の問題への対応策を話している時です。

「あれは問題ですよね」
「こうすればいいと思いますけど」
「当たり前ですよね」
「なんでできないんですかね、おかしいですよ」

というように、参加者がそれぞれの立場で思い思いに発言します。
感想を伝えあう感じです。
その様子はさながら井戸端会議、よくて座談会です。

自由に発言できる分にはよいのですが、放言にとどまり、雑談に終始します。
結果、何も決まらず、何も変わらず、私としては時間の無駄に感じます。
さらに、そのような話し合いが何度も繰り返されます。
そのうちに、話し合いの場に参加することが憂鬱になります

そこで感じるのは、決定権者において「自分が決めなければならない」という意識が希薄だということです。
そんな決定権者は、誰かがよさそうな案を出してくれるのを待っているようにも見えます。
そのうちに、なんとなく話の流れができてはくるものの、取り組みの内容と進め方はフワッとしたままです。
ですから、やる人は独自に取り組むこともあるし、話題が忘れ去られることもあります。

このような「決めなければならない」という意識が希薄な決定権者には、
まず、決めることが自身の役割の一つであると認識してもらう必要があります。

それとは逆に、決定だけは早い決定権者の例もあります。
ある企業の事業部で、新規案件を受注することになったと聞いた時のことです。
それが、既存案件とは異なる対応を要するものだったので、念のために詳細を聞いてみると決まっていない、
それどころかヒアリングも十分ではないようでした。
大丈夫かな…と思っていたところ、案の定、後から問題が顕在化し、かなりの納期遅延が発生しました。

決定権者はA部長、「決めるのは自分の役割」という認識はあるようで、
普段からスピーディーに決裁を行う方でした。
一方で、よく口にされるのが「自分が責任を取る」という言葉です
(ある意味、口癖とも言えるかも…)。
この「責任を取る」という言葉、その意味するところが「謝りにいく」ということだとわかったのは、
A部長と接するようになってまもなくでした。
A部長は、何かあったら謝ればよい、謝って対応すればよい、と考えています。

では、なぜ、A部長はそのように考えているのでしょうか。
A部長と接していて気づいたのは、A部長は現場の業務が分からない、
現場の業務を理解しようとしていない、ということでした。

現場の業務は分からない、業務にどのような準備が必要か分からない。
決めるためにどのような情報が必要か分からない、
けれど決定権者としてスピーディーに決めなければならない。
決めてうまくいかなければ、決定権者として謝るしかない、謝るのはやぶさかではない、
そんなふうに見受けられます。

もちろん、問題が発生したら統括者として謝り、対応する必要がありますが、
本来は、できる限り問題が発生しないようにきちんと事前準備を行うようにするのが統括者の役割責任です。
きちんと準備をしてもトラブルは発生しかねないものですが、
準備が不十分だとトラブルが発生する確率は格段に上がります。

ということで、整理すると、決定権者には

・決定権者が「決めること」「決定」を自分の役割責任と認識する
・決めるために必要な情報を明確にする
・決められるよう、現場の業務を十分に理解する

ということが求められます。
ごく当たり前のことに思えますが、当たり前だからこそ、
無意識にできる人とそうではない人が出てくるのかもしれません。

それから、「決定」にはトレーニングも重要だと感じています。
決めてこなかった人が、決めようとしても、迷ってしまう。
判断の項目や軸・基準が無いのです。
それには、事例に学ぶことが有効だと考えています。
事例においては、どのようにコストとリスクとベネフィットが見積もられ、
どのように判断基準が設定されていたのか。
特に成功事例において、どのような判断の項目や軸・基準があれば、
自分も同様の意思決定をスピーディーに行いえたのか。
折にふれて、このようなケースワークを行ってみてもよいかと思います。
決めるべき人が、適切に決めていけるように努めていきたいものです。