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No.123 計画が作りっぱなしになっていませんか?

2024-08-01
こんにちは、アオイパートナーズの齋藤です。
先日、知り合いの経営者の紹介で、ある社長からスポットで相談を受けました。
守秘義務があるので会社概要は控えますが、概ね以下のような内容でした。

・コロナ禍以降、業績が低迷しており、借入金返済も厳しくなっていた。
・昨年秋にメイン銀行に相談したところ、コンサルを紹介された。
・借入返済のリスケジュールを目的に、経営改善計画の作成に着手した。
・その後計画書を完成させ、返済金のリスケジュールも実行された。
・計画初年度の決算は、計画を下回ってしまった。
・決算書を銀行に提出したが、何も反応がない。

以上のような状況で、今後の銀行との関わり方についてかなり不安を持たれていました。
「もちろん、計画した売上・利益の数字を達成すればいいことは分かっていますが、今後の銀行への報告や相談、
提出資料などをどうすればいいかわからないのです」
「計画作りを手伝ってもらったコンサルからは、その後のフォローはしないと言われています」
「本音でいえば、直接銀行へ聞いて、こちらの負担が重くなるのも避けたいのです」
このようなことをおっしゃっていました。

さらによく話を聞くと、銀行もコンサルも、経営改善計画を作ること自体が目的だったように思えます。
計画書の数値計画も実現可能性を疑うようなもので、アクションプランも教科書的で表面的なものでした。

銀行としては、リスケすることはやぶさかではないが、その根拠として改善計画が必要。
コンサルとしては、銀行の意向を汲んで改善計画を完成させ、リスケをスタートさせることが仕事。
その後のことは、会社の責任で実行するもので、銀行もコンサルも関与しないという姿勢だと感じました。

この社長も、リスケが実行になり安心してしまったようで、本来の目的である経営改善を進めて
数値計画を達成することへのコミットが弱かったようです。
そもそも、コンサル主導で作られた改善計画ですから、数値計画もアクションプランも、
社長の意思がどれだけ盛り込まれていたかも疑問です。

この銀行とコンサルの対応もどうかと思いますが、計画を作っても作りっぱなしになっているという話はよく聞きます。

計画書を作って銀行に提出するのは、リスケをする場合か新規融資を受ける場合がほとんどですが、
目的が叶ったらそのまま社長の机の中に入りっぱなしになってしまう。
忘れた頃に、銀行から計画と実績の比較報告を要求されて、あわてて資料を作成する。
このようなことは、私の経験上もよく見聞きしました。

銀行へ提出せずとも、少なくとも当期の損益計画や予算は、どの会社でも作っているでしょう。
それは会社が生き残るために必要な数値ですから、達成するために組織全体を巻き込んで
動かしていかなければなりません。

そのためにも、社長をはじめ経営者層が、毎月の計画と実績を照らし合わせて、
次にどんな手を打つかを決めて、キーパーソンに指示していく。
さらに、指示したことを管理する、現場の意見を吸い上げて次のアクションに活かす。
こんな当たり前のことができていないとすれば、そもそも貴重な時間をかけて計画を作った意味がありません。

冒頭の社長は、銀行とコンサルの対応に不満がありそうだったので「結局は社長自身の姿勢の問題ですよ」と
指摘したところ、腹に落ちたようでした。

数値計画は、その達成に社長自身がコミットしていなければ、社員がコミットして動くはずがありません。
経営者層が、毎月の計画と実績を対比して、課題と対策を考えて社員に実行を要求していかなければ、
社員が自ら考えて動くはずがありません。
それが中小企業の現状です。

作りっぱなしの計画は、意味がないだけでなく、害悪です。
「計画を達成してもしなくても、どうせ何も変わらない」と社員に見透かされ、組織全体のパワーが落ちるからです。

数値計画を作ったら、月次で実績管理と分析をする。
アクションプランを決めたら必ずフォローする。
そのプロセスを通じて、経営者層の本気度を組織全体に伝播していってほしいものです。