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No.10 間違った理念作りをしないために

2021-09-02
こんにちは、アオイパートナーズの齋藤です。

弊社がこれまで関わってきたオーナー経営者は誰しも、自分の会社をこんな会社にしたい! という想いを何かしら持っていました。
しかし、その想いを企業理念に適切に表現し、組織で共有し、一人ひとりが実践している会社はほとんどありません。

経営者でも自分の想いを適切な言葉で表現することは意外に難しく、結局はよその会社の理念からカッコいい言葉を部分的に拾ってきて、
手っ取り早く自社の理念に仕上げてしまっている経営者もたくさんいました。
その結果は、壁に飾ってあるだけで誰も意識をしない、文字通り「お飾りの企業理念」の出来上がり。
組織に何の変化も生まれません。

弊社も中小企業の理念策定のお手伝いをさせて頂いていますが、「お飾りの企業理念」ではなく意味のある企業理念にするために
押さえているポイントがあります。
今回はそのポイントの中から、基本的なことについてお話しします。


■企業理念と経営理念はどう違う?

会社の理念には、企業理念と経営理念の2つの概念があります。
会社に理念が必要だと思われている経営者の中でも、企業理念と経営理念の違いを理解している方はほとんどいません。
理念は会社の考え方を社内・社外に示す最も大事な言葉ですから、理念作りにあたってはこの2つの定義や違いを理解しておくべきです。

企業理念とは、会社が事業活動を行う上で大切にする根本的な考え方のことです。
会社が存在する目的、将来のありたい姿、大切にする価値観を言葉で表現したものです。
会社のあり方ですから、長期にわたって大きく変わるものではありません。

経営理念とは、経営者が経営のかじ取りを行う上で大切にする根本的な考え方のことです。
何を目標としてどういう手段で実現していくかといった経営方針をシンプルに表現したものです。
創業社長と2代目社長で経営方針が変わり、経営理念を刷新することもよくあります。

どちらが良いということではありませんが、表現する言葉はおのずと違ってきます。
大事なことは、経営者自身が腹に落ちる言葉で社内・社外に発信でき、理念実現に向けて自ら率先垂範できること。
ちなみに弊社では、経営者個人の考え方を踏まえた上で、会社の存在意義を言語化して組織全体で共有し、
一人ひとりが主体的に行動していける企業理念の策定をお勧めしています。


■何のために企業理念を作るのか?

「なぜ理念を作りたいのか?」と尋ねると、経営者の考えに沿って社員を動かしたいというニュアンスを感じることがあります。
経営者が自らの想いを実現するために組織を動かすことは間違いではありませんが、
それでも「理念は社員を動かすためのツール」というような考え方には違和感があります。

こういう考え方で理念を作った場合、経営者自身は組織の外にいて、そこから全体を俯瞰しているような意識になりがちです。
経営者は「理念は会社の憲法だ、理念に沿った行動がなぜできないんだ」と社員を叱責し、
社員の方は「経営層はどうなんだ」と反感を覚え、相互の信頼は崩れ落ちていきます。

企業理念は、社内・社外との約束事であり、行動しなければ価値はありません。
どんなに共感されそうな言葉で表現していても、行動が伴わなければ「言っていることとやっていることが違う」となり、
理念を作り公開したことがかえってマイナスになります。
社員はいつも経営者の行動を見ていますから、企業理念を作ったらまずは経営者が率先垂範しなければならない。
一番大変になるのは経営者自身です。

だからこそ、弊社が企業理念作りをお手伝いする際には、何のために作るのかという目的を明確にしていただいています。
その目的のために、ぶれずに発信しあきらめずに行動していく経営者の姿を見て、考え方と行動が少しずつ組織に浸透していき、
いずれ顧客や社会に正しく伝わっていくことになります。


■理念作りには時間と対話が必要

自分の考えを言葉にするのだから簡単だと思われるかもしれませんが、
社内・社外に伝わるようにシンプルでわかりやすい表現にまとめるのはかなり難しいことです。

よくある作り方としてテンプレート方式がありますが、パソコン上のフォーマットに向かって頭を抱えていても、
思い付く言葉が堂々巡りになってしまって、なかなかまとまりません。
そのうち、考える時間がもったいないと思うようになり、途中で断念したり、安易に他社のマネをしたり、ということになってしまうのです。

また、社内の幹部数人で話し合いながら作るという方法もあります。
とはいえ、この方法が成功するには、幹部社員が社長と同じレベルの想いや知識や情報を持っていて、
言葉の本質的な意味と価値をわかっていて、社長が伝えたいことを別の表現で適切に言語化できる能力を持っている必要があります。
しかし、そのような幹部社員はそうそういないのが現実です。

本気で企業理念を作るなら、それなりの時間をかける覚悟が必要です。
さらに、その時間の多くは対話に使わなければなりません。
経営者が自分の想いを人に語り、自分が思ってもいなかった視点から質問をされてじっくり考え抜くからこそ、
伝えたいことの核心が見えてきて、余計な説明が削ぎ落とされたシンプルな言葉が紡ぎ出されていきます。
弊社が支援する理念策定ではこのようなプロセスを経るため、それなりの時間を要することになります。

相応の相手とじっくり対話をしていけば、社長自身が腹落ちするとともに多くの人の心に届く企業理念が必ず出来上がります。
会社に理念が必要だと思われている経営者の皆さんには、ぜひとも知っておいてほしいことです。