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No.138 総料理長の隠し味(社内リソースと外部リソースについて)
2025-03-17

こんにちは、アオイパートナーズの久保田です。
様々なモノの価格が上昇していますね。
すぐに頭に浮かぶのが米の値段で、本当に高い。
これが、政府の備蓄米放出でどうなるのか…今後の動向が気になるところです。
その他の食材の価格も軒並み上昇していますし、4月からさらなる値上げも明らかになっています。
小売店の食材の価格だけでなく、飲食店でも値上げが相次いでいます。
人件費や水道光熱費の負担も大きくなっていますから、やむを得ないのでしょう。
以前から、海外の飲食店の価格は日本と比較して高く、ファーストフードの価格も高い水準でした。
それと比べて、日本では美味しいものを安価に手軽に楽しむことができてこられたといえます。
しかし、日本でも物価上昇により、外食が以前ほど気軽なものではなくなっていくと感じる消費者も
増えていくかもしれません。
そうすると、自炊も食材は高いけれど、外食に比べればまだマシ…という消費者心理が働き、
外食の機会を減らすこともあるでしょう。
それに伴い、飲食店の経営環境は厳しいものになりかねません。
そのような環境の中で存続するためには、選ばれる店を目指していかなければなりません。
できるだけコストカットをしつつ、ターゲットとする消費者に選んでもらえる美味しさや
サービスの質・独自性を追求していく必要があります。
そんなことをつらつらと考えていて、あるエピソードを思い出しました。
それは10年近く前のこと。
経営改善のお手伝いをしていたA社さんの1部門に飲食部門がありました。
その飲食部門には複数の業態の店舗があり、それを総料理長Bさんが統括していました。
B総料理長は地域でも一流として知られていました。
A社の飲食部門の各店舗では季節ごとにフェアが開催され、その監修をB総料理長が行っていました。
私は度々フェアに伺っていて、B総料理長とメニューについてのお話をすることもありました。
ある夏のフェアで伺った時にも、B総料理長が私の席に立ち寄られたので、
私は「今日は、このお料理、特に美味しかったです!」と伝えました。
そうしたら、B総料理長はニコニコしながら
「これには隠し味が入ってるんですよ。なんだと思います?」
と聞いてくるのです。
えー、なんだろう?グルメな方々にも評判のお店だし、と考え、
「何か特別なものなんですか?」と聞き返した私に、
「実は焼肉のタレを入れてあるんですよ」
とB総料理長は笑いながらコッソリ教えてくれました。
「え、焼肉のタレ!?特注のものですか?」とさらに尋ねると
「いえいえ、普通の市販のですよ」
とB総料理長は可笑しそうに答えました。
確かにそのお店は焼肉店でも韓国料理店でも、定食屋さんでもありませんから、焼肉のタレも特注ではないでしょう。
にしても、このお店で、普通の市販の焼肉のタレが隠し味とは…。
ビックリしている私に、B総料理長は
「焼肉のタレは結構、使えるんですよ。久保田さんもおウチで作ってみてくださいね」とおっしゃいました。
私は、「わー作ってみますー!」と答え、実際に家でチャレンジしてみました。
が。
私が作ったら、そんなに美味しくできなかったのです。
普通の美味しさでした
(ちなみに、日常的に料理はしています、一応)。
そこで感じたのは、プロの腕、プロの技、プロの味覚。
それらにより、市販品を使いこなして、プロの仕上がりにするのです。
いやあ、プロは流石だ、と感じました。
併せて、柔軟な発想に感服しました。
飲食店において、「お店で手作り」はウリ、訴求ポイントの一つです。
ですが、自前にこだわり過ぎず、市販品や製造アウトソーシングといった外部リソースを活用しながら、
自店で価値を付加するという選択肢もあるということを実感した事例でした
(もちろん、法定の原材料標記等は必要ですが、
わざわざ市販品であることを発信してイメージを低下させる必要はありません)。
外部リソースの活用には、
・外部の専門スキルを活用できる
・自社のリソースをコア業務に集中できる
・自社の組織の肥大化を防げる
・人件費や固定費を抑えられる(調整が可能)
といったメリットがあります。
一方でデメリットとしては、
・社内にノウハウが蓄積されない
といったものがあります。
特に、製造アウトソーシングには、情報漏洩のリスクが高まるというデメリットもあります。
ですから、これらのメリットとデメリットを勘案して外部リソースを活用していくことが求められます。
また、市場や世の中の変化、消費者のニーズやこだわりの変化に合わせて活用の仕方を変えていく必要もあります。
選ばれ続けている企業はアップデートが上手です。
そして、なにより、商品やサービスに独自の価値を付加するための差別化ポイント・自社の強みはどこにあるのか、
について十分に検討を行っています。
自社の強みを活かすことに社内リソースを集中的に使うための、外部リソースの活用だからです。
B総料理長の事例でいえば、焼肉のタレを隠し味として使いつつ、別のところにプロの技と時間をかけたということです。
もちろん、これは飲食業界に限ったことではないですね。
原材料費、人件費、様々なコストが引き続き増加していくことが見込まれるなかで、
どのような業種・業態においても、ますます重要になっていくだろうと感じています。
最も重要なことは、顧客に支持される商品・サービスを提供し続けること。
そのためには、柔軟な発想をもって事に当たっていきたいものです。
あの、一流のB総料理長のように。
