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No.140 経営者の影響力

2025-04-15
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こんにちは、アオイパートナーズの久保田です。
春は出会いの季節ですね。
先日は、入学式に臨んだ学生さんたちの、不安と期待が入り混じりつつもウキウキした姿を見かけ、私も元気をもらえたような気がしました。

弊社でも、新たなご縁をいただき、企業理念策定をご支援しています。
企業理念策定の進め方は企業側のご要望や現状によりマチマチなのですが、今回については経営トップからヒアリングし、伺った内容を企業理念の形にまとめた後、キーパーソンに話を聴いてブラッシュアップしていくという流れで進めています。

先日、キーパーソンの方々にお話を伺ったのですが、その中のお1人が
「理念が明確になっていないと判断に迷ってしまうことがある。
また、ホームページで公開した理念が現実と乖離していると、
お客さんに『言ってることとやってること』が違うと言われてしまう、やりづらくなる」
とおっしゃっていました。
本当にそのとおりです。

ですから、企業理念は、追求し続けたいものでありつつ、追求可能なものでなければなりません。
これは従業員にとってだけでなく、経営陣にとってもあてはまります。
企業理念を策定すると、従業員は理念を共有することを求められ、それが負担になるように思われがちです。
しかし、実は、むしろ経営者が一番大変になります。
なぜなら、経営者が率先垂範しなければならないからです。

従業員は経営者の言動をよく見ています。
「立派な企業理念があるけれど、そもそも社長や役員の言動は理念に則っていないのではないか?
それは、本気で理念を追求しようと思っていないということではないか?
では、自分たちも本気で理念を追求する必要はないのではないか?」
このように従業員が感じてしまうと、企業理念は絵に描いた餅となります。
企業における経営者の影響力は本当に大きいということです。

経営者の影響力で思い出すのが、企業理念策定ではないのですが、以前に数年ほどご支援したX社です。
こちらでは、共通の知人を介して、新入社員研修の講師を務めることになりました。
それまでX社では、随時の中途採用を行っており、入社時の教育は都度、配属先で行っていたそうです。
それが、新卒の一括採用を始めることになったので、会社として新入社員研修を行いたい、
ついては外部の講師による講義も入れたいとのことでした。

新入社員研修の企画にあたっては、何度か打合せを行いました。
打合せは人事担当のY課長のほか、常務のZさんも同席されました。
Z常務は従業員同士の関係性に問題を感じているとのことで、
新入社員の研修にはコミュニケーションのロールプレイングにも長めの時間をとることにしました。

3度目の打合せの時だったでしょうか、応接室が来客との面談が長引いて使用中だったので、
玄関ホール脇のスペースで打ち合わせを行うことになりました。
そこはオープンスペースでしたが、新入社員研修の打合せを行う分には情報流出を心配する必要もないので、
場所としては十分です。
そんな場所ですから、X社の従業員同士も何組か打合せを行っています。
私が1人、Z常務と担当者のY課長をお待ちしていると、先に姿を見せたのはZ常務でした。
すると、打合せをしていた従業員のうちの一人が
「Zさん、ちょっといいですか?
総務の○○さん、やりづらくてしょうがないですよー、ちょっと申請が遅くなったくらいで受け付けないとか言うし。
皆、モヤモヤしてるんですよー」
と、Z常務に声を掛けました。
それに対するZ常務の言葉に私は驚きました。
Z常務は、
「あー、○○さんねー、本当に面倒だよねー、まあ我慢してよ」
と答えたのです。
それを聞いて、私はビックリしました。
「いやいやいや、常務の立場だとイザコザを解消していかなくちゃいけないんじゃないの?
面倒だとか言って、火に油注いでない?
人の性格を問題視するんじゃなくて、業務プロセスの問題・ボトルネックに焦点を当てるように話し、
改善を進めるように促すべきじゃないの?
常務がこの様子だと、社員同士で気に入らない人のことを悪く言い合うのは当たり前、
社内の雰囲気はよくないだろうなあ」
と思ったのです。

そこへ担当者のY課長もやってきたので、Z常務は
「あ、じゃ、これから打合せだから」
と話を切り上げて、こちらの席に着きました。
Z常務は
「久保田さん、聞いてました?
面倒な総務の社員がいてね、総務からも他部門からも不満続出ですよ。
こうならないように、新入社員のうちから教育したいんですよねー。
それでですね、研修なんですけど…」
と話し始め、その日の打合せに入っていったのでした。

それから何度か、私はX社の新入社員研修の講師を務めさせていただきました。
その中で、人事担当のY課長を始め、複数の従業員の方から
「従業員同士の関係性が非常に悪く、揉め事が頻発している、従業員の退職も多い」
というお話(愚痴)を何度もお聞きしました。
時折、弊社からも組織風土改革の取り組みをお勧めしてみることもありましたが、
Z常務は
「いやいや、ウチにはいい人が入ってこないからしょうがないんですよ。
どうしたらいい人が入ってくれるんですかね」
と言うばかりで、組織を変えていくことへの関心は薄いようでした。
そして、数年経ち、X社は、再び中途採用メインに舵を切ることになり、新入社員研修も終了となりました。

今でもたまに、X社のことを考えることがあります。
その度に、経営者の影響力の大きさに感じ入ります。
経営能力の高低によらず、リーダーシップの強弱によらず、経営者が企業にもたらす影響力は本当に大きい。
企業は経営者次第と言っても過言ではないかもしれません。
とはいっても、経営者が適任者であるとも限りませんし、適任者への交代も容易なことではありません。
では、経営者自身が変化することは可能なのか。
その問いに対する私の答えは、「不可能ではない」です。
ポジションの変化(昇任)に伴い意識が変わった人を、少数ではありますが知っています。
人は変われるんだなあと思って、私自身も勇気づけられました。
では、変われる人とはどんな人なのか。
一つ、確実に言えるのは、「自ら変わろうとしている人」です。
そして、もう一つ、人を変えるのは「出会い」です。
人との出会い、本との出会い、出来事との出会い、いろいろな出会いから、気づきを得て学んでいく。
つまり、「自ら変わるべく、出会いを求めていく人」は変わっていけていると感じます。

春は出会いの季節。
その春の今だけでなく、常に自ら出会いを求め、よい気付き、よい学びを得ていけるようにしたいですね。
そして、できれば、自分も誰かの変化のきっかけになっていきたいものです。