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No.71  組織の同質性と異質性、どちらを重視しますか?

2022-11-24
こんにちは、アオイパートナーズの齋藤です。
当社は、クライアント企業の組織に直接関わりながら、組織マネジメントの実行支援をしているので、人や組織に関するさまざまな相談を受けています。
その中で、組織における同質性と異質性について考える機会がありましたので、今回のブログで少し深掘りして考えたいと思います。

ある企業の社長は、「どうしても自分と考え方の近い人を好んで採用してしまう。もっと違った個性を持つ人たちを意識して採用していかなければならない」という問題意識を持っていました。

組織の同質性が高いとは、単純に言うと考え方や価値観が近い人が多いということ。
そのような集団では、物事の理解・共有がスピーディに行われ、人間関係の違和感や対立も生まれにくく、
コミュニケーションにかける時間も大幅に短縮され、パフォーマンスの質も上がっていくものです。

企業においては、社長が「こっちへ行くぞ!」と声をかければ、細かい説明がなくても
メンバーはその背景や意図を汲み取り、一致団結して行動を起こせるような組織というイメージでしょうか。
現実にはこんな単純なことにはならないと思いますが、それでも、少なくとも短期的な成果を求めるなら、
同質性の高い組織の方が成果を出しやすいように感じます。

一方で、同質性が高まるほど、新しい視点でモノを考えたり、全く異なった発想で業務を変革したりする人が
出てこない、俗にいうイノベーションが起きにくいとも言われています。
経営者としては常に進化し続けることが必要だと思っていますから、このような状態は決して好ましくないはずです。
冒頭の社長のように、自社の風土に合うかどうか不安を持ちながらも、違った個性を持つ人が
組織に良い影響をもたらしてくれることを期待して、採用を考える場合も少なくないでしょう。

しかしながら、今のメンバーとは異なる能力や志向性や価値観を持っている人材を、経営者が意図的に採用して
組織に入れた場合、採用された人にも受け入れる側にも、双方に違和感が生まれやすいものです。
採用された人は、「周りのことを考えて組織に合わせろ」という同調圧力を感じて、仕事がやりにくくなり、
パフォーマンスが落ちてしまう。
受け入れるメンバー側は、その人の考え方や行動に対する違和感に我慢できなくなって、
その人を排除しようという動きが出てしまう。
採用した経営者の意図を伝えたとしても、それそれが自分の立場を守ることを優先に動いてしまいます。
とても残念なことですが、現実的にはありがちなことです。

「最小有効多様性」という概念があります。
これは「環境変化に適応するために必要な多様性と、組織の凝集性を維持するために
必要な単一性がバランスする多様性レベルのこと」と説明されています。
つまり、同質性と異質性のバランスをうまく取りながら組織運営をしていくことが現実的であり、
これが組織マネジメントにおける難しい点だと言えるでしょう。

組織には同調圧力があるので、放っておけば同質化に向かいます。
異質な人は、同質化して組織に溶け込んでいくか、さもなくば排除されるか、どちらかになるからです。
だからこそ、異質な個性を持った人が、そのままの状態で組織に活かされることが望ましいことであります。

managementのmanageには「何とかする」という意味があります。
「あちらを立てればこちらが立たず」の状態を何とかすることもマネジメントの役割とすれば、
同質化する組織に異質な個性をうまく取り入れることも大事なことです。
そのために、まずは組織の中にある違和感をいち早く察知して放置しないことが、
マネジメントを担う人たちに求められます。
決して、異質な人を排除するような組織風土にしないためにも。

同質化しすぎた組織に、変化に対応して未来を創る力はありません。
違う個性を持つ人たちを活かして成果をあげられる組織を作り上げるのは、トップマネジメントにしかできない仕事です。
組織として譲れない大事なことだけはきちんと理解・共有したうえで、それぞれの主体性を生み出せる仕組みが必要です。
それをいかにして構築するか。
簡単なことではありませんが、まずは着手しないことには実現できません。